清酒のおいしさには,きき酒による「口の中で感じられるおいしさ」と「摂取したときのおいしさ(生理的おいしさ)」があり,両者の関係を筆者は,マウス,飲酒経験の浅い初心者群及び官能検査経験を有し長期飲酒経験者群について検討した。その結果,清酒の美味しさを決定する因子として,初心者群はマウスと同様,生理的美味しさが重要であるのに対し,経験者群は生理的美味しさの占める部分は少なく,情報や文化,経験など味覚以外の情報も影響していることを明らかにした。そのほか,空腹時と摂食後の嗜好の違いや美味しさを左右する要因についても言及しており,人間の嗜好判断の複雑性が理解できる。熟読をお勧めしたい。