個人が特定の領域に自尊感情を随伴させている程度は,自己価値の随伴性と呼ばれる。これまで学業領域における自己価値の随伴性を扱った研究では,主にその抑制的な機能について扱われてきており,促進的な機能についての検討はあまりなされてこなかった。本研究では,自己価値の随伴性が動機づけや学業達成を促進することを予測し,これまで扱われてこなかった促進的な機能に着目した。中学生154名を対象に中間テストと期末テストを利用した3度の質問紙調査を行った。中間テストで達成度の低かった生徒のうち,自己価値の随伴性が高い生徒は,状態的自尊感情を低下させ,ネガティブ感情を高く喚起していた。さらに,ネガティブ感情は期末テストの成績と正の関連を有していた。一方で,中間テストで達成度の高かった生徒のうち,自己価値の随伴性が高い生徒は,状態的自尊感情とポジティブ感情を介することで,期末テストに正の影響を与えていた。