本研究は,レジリエンス及びストレス経験からの成長と情動知能の関連の検証を自己領域と他者領域の区別を軸として行った。大学生245名(男性104名,女性141名)を分析対象とした。対象者は,情動知能,ストレス経験からの成長,レジリエンスの各尺度から構成される質問紙に回答した。情動知能に性差が認められたため,男女別の多母集団の同時分析を行った結果,男性では,最もストレスが大きかった経験に対して他者領域のレジリエンスを活かすことが,他者の受容という成長を通じて,情動知能の他者領域を高める影響を与えることが示された。他方,女性では,自己領域のレジリエンスを活かすことが,自己への信頼という成長を通じて,情動知能の自己領域と他者領域の両方を高める影響を与えることが示された。以上の結果に基づき,性差が生じた背景及び,環境要因と情動知能との関連について議論を行った。