本研究は,中年期の夫婦関係において,成人の愛着スタイルが関係内の感情経験および関係への評価に及ぼす影響についての検討を行った。調査対象者は,156組の中年期の夫婦であった。その結果,愛着次元の関係不安は,回答者本人と配偶者のネガティブ感情と正の相関関係を示し,また,両者の関係への評価と負の相関関係を示していた。親密性回避の次元は,回答者本人のネガティブ感情や関係への評価と関連を示すのみであった。さらに,上記の関係不安と本人ならびに配偶者の関係への評価との関連は,双方のネガティブ感情経験によって媒介されていたが,親密性回避については,本人の関係への評価との関連についてのみネガティブ感情経験によって媒介されていた。上記の結果について,先行研究で示された青年期の子ども–母親関係ならびに青年期の恋愛関係の共通項との相似および相違の観点から議論を行った。