本研究では,愛着の内的作業モデル(“不安”と“回避”)が対人情報処理に与える影響を,語彙判断課題を用いて検討した。実験参加者は大学生64名であった。“反応のずれ”(ネガティブ刺激に対する反応時間からポジティブ刺激に対する反応時間を減じた値)を従属変数とした階層的重回帰分析の結果,(1) 対人関係関連語において“反応のずれ”は“回避”からの有意な影響を受けていた。また,(2) 対人関係関連語の“反応のずれ”は“不安”と“回避”の交互作用の影響も受けていた。これらの効果は“不安”と“回避”の双方が高い場合に最も顕著であった。このことから,対人関係に関連した情報の処理は愛着の内的作業モデル,特に“回避”の影響を受けることが示唆された。しかしながら,(3) パーソナリティ関連語においては,“反応のずれ”は“不安”と“回避”のどちらの影響も受けていなかった。最後に,今後の方向性について議論された。