近年,高齢者の心理的なケアのニーズから回想法への関心が高まっているが,しばしば青年期でも頻繁に回想が行われていることが指摘されている。本研究では個人の心理・社会的発達の相違が日常的な回想と異なる関連をもつ可能性を検討するため,Marcia(1966)の同一性地位による青年期の日常的回想の特徴や心理的適応の違いを検討した。さらに,縦断的データから回想と心理的適応間の相互的な因果関係について検討した。 大学生,看護学校生,専門学校生190名(平均年齢21.5歳)に対して,同一性地位判定尺度(加藤,1983)などからなる質問紙調査を実施した。その結果,過去の危機と回想の頻度や否定的感情を伴う回想の間に有意な相関が認められたものの,パス解析の結果では同一性地位が回想に及ぼす影響は認められなかった。また頻繁な回想は精神的健康度を低める一方で,自尊感情の低さは頻繁で否定的感情を伴う回想を促し,適応指標間で異なる回想の影響が示唆された。