本研究では,従来の成人愛着研究が暗々裏に仮定してきた「成人愛着スタイルは成人の愛着行動パターンの違いを反映する」という理論的前提の妥当性を実証的に検討した.大学生378名に対して,成人愛着スタイル尺度と本研究で作成した成人愛着行動尺度を実施した結果,以下の2点が示された.すなわち,成人愛着行動を直接的愛着行動(安全欲求を直接的に表現する愛着行動)と間接的愛着行動(自他の適切な心理的距離の調整にとらわれるため,安全欲求を間接的に表現する愛着行動)の2種類に分類した場合に,成人は,(1)「親密性の回避」が低いほど直接的愛着行動をより行い,(2)「見捨てられ不安」が高いほど間接的愛着行動をより行う.また,これらの結果は,愛着スタイルの4分類を用いた分析においても確認できた.以上の結果から,本研究により,上記の理論的前提が妥当であることが実証された.