本研究では,ネット上の知的共有基盤を通じて医療消費者・医療従事者・創薬研究者の間で医薬品安全性情報が効果的に循環する社会システムとして,絶対に起こしてはならない医薬品有害作用のひとつである薬物催奇形性に焦点を当て,Webベースの医薬品安全性情報コミュニティ・データベースシステム(anzen-drug com)を構築した。データベースは,医薬品基本情報,化学構造情報および症例情報のサブシステムから成り,多様なコミュニティメンバーが妊娠と薬に関する情報を適切に検索・収集・登録できる機能を持つ。特に,症例データベースには医療消費者が妊娠中の服薬経験を症例として登録することができる。また,独自のアルゴリズムに基づき開発したSimScoreは,安全性未知の化学物質と催奇形性薬物間の化学構造類似度の定量的算出が可能である。本情報コミュニティの知的共有基盤の整備は,根拠に基づく医療の実践と効率的な医薬品研究開発およびリスクコミュニケーションに寄与する情報医療薬学分野の人材養成に役立つと期待される。