科学研究とイノベーションの関係の分析のために,特許における科学論文の引用頻度を指標化したサイエンスリンケージ指標が貴重なツールとして用いられてきたが,この指標は引用された科学論文の多様な情報を全く反映していない。そこで,本研究では,有力特許に引用された科学論文のリストを作成し,それをScience Citation Index (SCI)データベースと照合させて書誌情報を取得し,その特性の分析を試みた。この分析により,有力特許に引用された科学論文における日本のシェアは,米国とイギリスに次いで大きいことが確認できた。また,特許発明の源泉となった科学知識の生産に関して,世界的に大学が主要な貢献をしていることや,日本の政府研究機関の貢献は他の国の政府機関と比較して小さいと考えられることが明らかになった。また,日本のライフサイエンスに関して,1) 特許件数が少ないこと,2) 特許発明者による科学知識の活用が盛んでないこと,3) 世界的な特許発明の源泉となった科学論文が相対的に少ないこと,という3つの課題があることが判明した。