動物の中枢機能を担う脳は,依然として未知の部分が多く,現在,世界的に研究が進められている。我が国では,科学技術会議ライフサイエンス部会脳科学委員会の方針決定に基づき「脳を知る」,「脳を守る」,「脳を創る」の3領域において目標を定めて,関連省庁が連係して研究を推進している。「脳を知る」では,感覚の伝達とその情報処理の機構など,複雑な脳の働きの解明を目指している。「脳を守る」では,社会的にも注目されているアルツハイマー病など,脳の病気の克服にむけて研究が行われている。また「脳を創る」では,脳型コンピュータの開発が試みられている。ここでは,この3領域に関する最近の研究動向を概説する。