第一,二次世界大戦の科学技術動員を経て,主要国において1960年代に,フランス革命から200年間続けられてきた科学技術の制度化は完成する。すなわち,アメリカにおいては,戦争中の科学研究開発局(OSRD)の実績を基に,大統領科学顧問,科学技術局,NSF,NIH,NASA,海軍研究局(ONR)など連邦政府が科学技術を本格的に支援する体制が成立する。欧州,日本においては,戦後の経済復興を経て,アメリカに10年程度遅れて,閣僚レベルの科学技術の行政機関および研究実施機関などが整備された。現在,21世紀を間近に控えて,東西冷戦の終決,経済のボーダーレス化を背景として,世界システムは,19世紀の国民国家のシステムから各国間の協調体制へと大きく転換する様相を呈している。これに伴ない,ビッグサイエンス,基礎研究などを先駆に,各国の科学技術支援体制が,従来の国民国家システムでは捕えきれない"競争"と"協調"の転換期を迎えている。