日本科学技術情報センター創立30周年記念式典における特別講演の収録である。科学技術化社会の発展を考えるうえで, 無限にある科学技術情報の価値を評価・選別し, それらを再構成して活用することが重要である。これは人間性そのものとも関わる問題であり, 私たちは今後, 科学技術化社会の利便を上回る科学倫理を確立しなければならない。具体的には, これまで人間が浪費してきた天然資源を回収し, 再生するような工業化価値を創造し, 偏在化した工業化の恩恵を平等に分配する技術を確立することである。また, 自然界との調和をめざした人類全体としての自己抑制が人類の「自由」を保障するのであり, 人間の脳の良能がその可能性を持っている。