酸性雨が土壌中の細菌に与える影響を知るために,褐色森林土を用いてカラム実験を行った。純水およびpH3.5と2.5の硫酸溶液を100日間添加し,カラムからの流出液中の生菌数,カラム内の土壌中の生菌数を経時的に調べた。99日目にアンモニア酸化菌•亜硝酸酸化菌数とpH4の寒天培地で生育できる生菌数を計数した。実験開始直後にはpHの低い処理区ほど細菌の増加数が多く,グラム陽性菌の増加の割合が高かった。63日目から99日目にかけて酸を添加した処理区で生菌数の減少がみられた。pH2.5処理区ではアンモニア酸化菌•亜硝酸酸化菌の活性阻害が認められた。団粒構造の内外における酸の影響を評価したところ,63日目から99日目にかけて団粒外部ではグラム陽性菌の細胞数が大幅に減少し,種組成の構成比に変化があったと考えられたが,団粒内部では同様の傾向は認められなかった。同処理区での細胞数の減少の8割が団粒外部における減少であり,細菌にとって団粒が酸からの保護機能をもつことが示唆された。pH2.5処理区では,pH7で生育可能な細菌は主として団粒内部に存在し,pH4で生育可能な細菌の大半が団粒外部に存在したことから,これらの異なった細菌群による棲み分けが行われている可能性が考えられた。