木材の温度を上昇せしめ之れを測定すれば,温度傳導率が數學的に求め得る理論を概略的に述べ,各種比重階の樹種30箇に就き飽和蒸氣中に於ける内部温度の上昇經過を測定して次の如き結果を得た。 1. 一般に比重大なるもの程温度上昇に長時間を要する傾向が認められた。 2. 實驗開始後6~7分にして中心部の温度上昇は最大となり,その上昇速度は凡ての樹種に於て5~6(度/分)である。而して90°C以上に於ける上昇速度が特に樹種による遅速の相異を生ぜしめる様である 3. 平均温度傳導率は第1表の如くで比重との關係はy=x/0.225x-2.40で表される。 以上木材の温度上昇には樹種による特性は有るが,大體に於て比重大なるものは温度上昇が遅く,換言すれば平均温度傳導率が小さく,熱傳導率とは相反する結果を得たのである。從て熱を傅導する場所に木材を利用する場合に,それが定常的熱傳導なるか,不定常的なるかによつて,その樹種を如何に決定撰擇すべきかに對して本實験は一示唆を與へ得たものと思ふ。