1) 伐木造材作業の時間研究實行に當りては北海道帝國大學農學部天鹽第1演習林筬島事業區第4林班並に同苫小牧演習林山の神事業區第12林班に於て昭和14年度實行の官行斫伐事業の一部を研究に借用し伐木造材作業の功程を調査した。 2) 天鹽地方針濶混淆の天撚林に於て嚴寒時積雪上胸高直徑35cm以上のトドマツの擇伐をなし其の樹幹の性状により普通丸太,小丸太,及び胴木に造材せしめたるに造材高1fm當りの純正勞働時間は43~54分,其内譯は伐倒時間6~8分,造材時間37~46分であつた。 3) 同地方トドマツの伐木造材に於て立木の胸高直徑増大に從ひ其の勞働所要時間増加したのは當然であるけれども今其の全勞働時間について見るに胸高直徑40~45cmのものに於て約1時間を要し胸高直徑60cm附近のものでは其の150%増大し約2時間半を要した。 4) 天鹽地方の伐木造材作業に於て杣夫の道具別による勞働時間を見るに斧の使用は最も多く全勞働時間に比し58%,鋸の使用は之に次ぎ31%であつた。 5) 杣夫の技倆が本人の體力によること少くないことは天鹽地方の時間研究に採用した杣夫の仕事の出來高に個人差の判然認められたことにより首肯出來るが體力檢査其の他精神作用に迄立入つて杣夫の技倆判定をなすことは次囘の研究に讓ることにした。 6) 苫小牧地方のナラ,アサダ,カヘデ類を主林木とする濶葉樹林の皆伐により普通用材特殊用材,炭鑛丸太及び薪材を採取する作業に於て立木1fm當りの勞働所要時間は伐倒勞作14分,造材勞作58分,純正勞働72分,普通時間25分であつて又全勞働時間としては97分であつた。次に材種別について見るに普通時間を除いた純正勞働時間は普通用材1fmにつき34分,特殊用材50分,炭鑛丸太1本當り3.5分,薪材1本當り2, 3分であつた。又太い伐倒木から薪材を採取した時は玉切,割裂,棚積等の仕事を合はせ1rm當り108分即ち1敷當り約200分であつた。 7) 杣夫の能率や勤怠の判定に最も關係あるといはれる普通時間が全勞働時間に對する割合は當該研究では稍不十分であつたけれども苫小牧地方の時間研究に徴せば整備時間14%,損失時間9%,歩行時間3%,合計26%と確定された。研究に供した苫小牧地方の如き地形甚だ良好な森林に於て活動に好都合の12月の頃而も嚴重な監督の下で勞働する時に於てすら約25%の普通時間を見込む必要があるとせば一般に杣夫の勞働には純正勞働時間以外更に25%以上の普通時間を考慮して功程を査定すべきものと信する。