トランスキャビテーションプロペラ用翼型の一例として, SR230-NC1翼とSR230-SC1翼を設計し, 実験によりその性能を確認した。NC1翼は設計点において非キャビテーション状態となる翼であり, SC1翼はスーパーキャビテーション状態になる翼である。得られた成果を要約すると, 以下のようになる。 (1) NC1翼は, 予想通り設計キャビテーション数, 設計揚力係数においてもキャビテーションを発生せず, 揚抗比も35.3と高いものが得られた。キャビテーションバケットの幅も迎角にして約2.5deg.と広いものが得られた。しかしながら, 理論による性能予測は, 揚力係数が迎角にして約0.25deg.分大きくなり, バケットの幅も狭く, 今後の改良が望まれる。 (2) SC1翼も, 予想通り設計点においてスーパーキャビテーション状態となり, 揚抗比も33.1と高いものが得られた。理論により予測した性能も, 実験結果と良く一致した。これは, Cavitatorの効果により翼前縁からシートキャビテーションが発生したためである。 (3) 今回のように揚抗比を翼の優劣の基準とした場合, 設計揚力係数がキャビテーション数より高い場合にはSC翼, その逆の時はNC翼を選定するという判断基準が, 本研究の翼型設計過程により得られた。実際のプロペラ翼断面設計においては, これに船体伴流による流場の非定常性を加味して行くことになるであろう。