私たちの好ましい肌色は, 私たちの記憶色に基づいていることが知られている. 本研究は私たちの黄色人, 白人, 黒人についての肌色の記憶色を比較した. 同じグレイの衣装を身につけ, グレイを背景とし, 肌色面積比を統一した三人種の写真を液晶ディスプレイ上に示し, それぞれの人種の写真を被験者の肌色の記憶色で塗ってもらった. その結果, 白人の平均色相角が他の人種に比べて約10度小さいこと, 黄色人と黒人の色相の最頻値は黒人の方が5度程度大きかったが, 平均値には大きな差はなかった. 明度においては, 白人と黄色人は同じような領域に分布しており, 黒人はこの分布と重ならない明度の低い領域に分布している. これらの傾向は, 実際の肌色のデータとよく一致しており, 私たちの黄色人, 白人, 黒人の肌色に対する記憶色の分布が, 実際の三人種の肌色の分布を反映していることを示唆している.