ハロゲン化銀写真感光材料表面とその上に吸着・成長した分光増感色素J-凝集体の構造を, 分析カラー蛍光電子顕微鏡 (カソードルミネッセンス顕微鏡) 法, 高分解能低速走査型電子顕微鏡法, 原子間力顕微鏡法で観察した。ゼラチンを酵素で分解し, あるいはゼラチンを大量の温水で希釈して除去した臭化銀粒子には, ゼラチンはほとんど吸着していないが, わずかに残存するものが粒子間を繊維束として結びあっていた。その太さは約20nmである。用いたシアニン色素は4種類で, 表面の影響下で凝集体の核形成を生じ, 近傍の表面に吸着して, 溶液からの色素分子供給のもとに成長する。成長した凝集体は表面が約 (20~30) × (30~50) nmの大きさの直方体で, 厚さは色素と対イオンの種類ごとに大きく異なっていた。J-凝集体は単層ではなく多層吸着を行い, 一列に連なって島状を呈していた。このため色素の吸着量が粒子毎に大きく異なり, ほとんど色素の吸着がない粒子も存在した。また同一粒子内でも吸着量に分布があった。