高ダイナミックレンジ(High Dynamic Range, HDR)画像は,通常の画像よりもはるかに広い輝度範囲を記録した画像で,通常の画像よりも高精細な画像処理が可能であり,デジタル画像処理の中間処理やコンピュータグラフィックスで広く用いられるようになった.しかし,一般的に使用されているディスプレイの再現階調は狭く,HDR画像を直接表示することはできない.HDR画像を通常のディスプレイに表示するには,階調を圧縮するトーンマッピングと呼ばれる処理が必要である.これに対して,我々は観察者の注視情報に応じて画像の見えを明瞭にするトーンマッピング手法を提案してきた.さらに,画素値の高い領域注視時のパラメータ推定を改善した.しかし,これらの手法は従来の手法との比較評価が行われていない.そこで,本論文では,注視情報を用いたトーンマッピング手法の有効性を検証するため,画像の好ましさの観点から,注視情報を用いたトーンマッピング手法と従来手法の比較実験を行った.