欧州で高齢者の低栄養リスク者を簡便にスクリーニングするために開発された栄養評価法であるMNA法は, 評価点より「良好」,「低栄養のリスクあり」,「不良」の3段階評価である。本研究は, 特別養護老人ホームの入所者100人を対象にして, MNA法の適切さを検討するとともに, 従来栄養状態の指標とされている血清アルブミン値 (カットオフ値3.5g/dL) との関連で検討を加えた。栄養状態良好の3人を除き, その他の対象者97人は4群に分けられた; I群 (リスク (+), Alb>3.5), II群 (リスク (+), Alb≦3.5), III群 (不良, Alb>3.5), IV群 (不良, Alb≦315)。各群の1年後の状態と照らし合わせてみると, I群→II群→III群→IV群の順で栄養状態が悪化するとともに, 入院・死亡率が高く, 予後とよく相関することがロジスティック解析結果からも確かめられた。MNAの単独評価でも高齢者の栄養評価には有用であるが, 特別養護老人ホームに入所する要介護高齢者の栄養評価にはさらに, MNA法と血清アルブミン値を組み合わせることにより, 単に栄養状態ばかりではなく, 栄養状態の悪化の程度, さらに, 生命予後をも推定できるということが明らかになった。この研究結果より, 一歩を進めて早めに栄養状態の悪化高リスク群の選択ができ, ひいては早期に栄養介入を行うことも可能であると思われた。