米は世界3大穀物の一つであり, 30億人以上の人々の主食である。日本では白いごはんは長く庶民のあこがれの食品であった。形や色や材料などの多彩な食器を使った和食は美を愛する心を育んできた。豊かなデンプンと良質の脂肪やタンパク質に富む米は健康を育んできた。節句や冠婚葬祭など特別の日の食事は豪華で, 旬の食材を使い, 食生活に変化や夢を与えてきた。菓子や清酒をはじめとする米の多様な利用は, 繊細な嗜好を育て, 食品の加工や調理の科学と技術を発展させた。さまざまな食品, 食材, 食文化を外国から受け入れるに伴い, 米の消費が減り, 健康不安が増してきた。わが国の供給熱量自給率は大きく低下しており, 稲作を愛護することが求められている。米の備蓄態勢の確立には国民のコンセンサスが必要である。伝統食品としての米とその良さが子どもたちに伝えられ, 米の未知の機能を探求する研究が続く限り, 米は21世紀も健康食の主役の座を維持するであろう。