n-3系多価不飽和脂肪酸を多く含む魚類が, 循環器疾患の危険因子に及ぼす影響を検討するために, 魚介類の摂取の少ない都内の短大生を対象に介入実験を行った。 学生を魚摂食群 (介入群, n =39名) と対照群 ( n =35名) に無作為に分けた。介入群には, n-3系多価不飽和脂肪酸を多く含む魚 (n-3高含有魚類とした) を1尾, あるいは1切れ (1日に80-100g) を, 学内で昼食時に2週間摂食してもらい, 介入群の魚摂取前後で, また, 介入群と対照群との間で, 血清脂肪酸, 血清脂質 (総コレステロール, HDL-コレステロール, トリグリセリド), 凝固線溶系因子 [フィブリノーゲン, 組織プラスミノーゲンアクチベーター (t-PA), プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター-1 (PAI-1)] の値を比較した。 介入群において, n-3高含有魚類の1日に1回以上の2週間摂取後の脂肪酸構成割合 (%) は, 飽和脂肪酸には有意な変化は認められなかったが, 一価不飽和脂肪酸は有意に減少し, 多価不飽和脂肪酸は増加傾向を示した。多価不飽和脂肪酸の中で, n-6系多価不飽和脂肪酸構成割合は減少したが, n-3系多価不飽和脂肪酸構成割合は, 6.8%から9.7%に有意に増加した。n-3系多価不飽和脂肪酸のうち, エイコサペンタエン酸, ドコサヘキサエン酸も同様に増加した。n-3/n-6比は摂取期間前後で0.16から0.24へ増加した。いずれも, 介入実験終了2週間後には摂取開始時の値まで減少した。対照群では大きな変化は見られなかった。 また介入群においては, 血清脂質の中のHDL-コレステロール値は, 66mg/dLから69mg/dLへ有意に増加し, トリグリセリド値は66mg/dLから58mg/dLへ減少傾向を認めたが, 総コレステロール値には変化は認められなかった。また, 凝固線溶系因子にも明らかな変化は見られなかった。対照群ではいずれの因子も変化が見られなかった。 以上より, 日常魚介類を食することの少ない短大生では, 日常的に継続摂取可能な1日に約80-100gのn-3高含有魚類の摂取により, 血清中n-3系多価不飽和脂肪酸, HDL-コレステロールの増加をもたらすことが示された。