1) ビタミンB6の定量に用いられてきたStrepto-coccus faecalis R. ATCC 8043は, アラニンのそれぞれの光学異性体を利用して生育し, それぞれの光学異性体に馴養培養されたものは, アラニンやビタミンB6に対して異なる生育感受性を示した。 2) 本菌は生育に際してはビタミンB6, あるいはアラニンのD-, L-いずれかの光学異性体を必須因子とするが, アラニンの一つの光学異性体が供給されると, 必要な他方の光学異性体への変換がなされることが示された。このアラニンの光学異性体間の相互異性化反応は, ビタミンB6非依存性のものである。 3) 菌体構成アミノ酸の中で, アラニンはL-型が圧倒的に多く, 生育因子としてアラニンの個々の光学異性体, およびそれらの混令物, あるいはビタミンB6を用いても, L-型70~85%に対してD-型30~15%の割合であった。 4) 本菌の生育時のビタミンB6の生理的役割の一つはアミノ基転移酵素のホロ酵素の形成にあり, アラニンではその役割が代替できない。また, アラニンは本菌の菌体構成成分の必須のものであり, 生育に際しては不可欠のものである。このアラニンで生育することによって, アミノ基転移反応酵素のアボ酵素を形成することは可能であるがホロ酵素は形成できない。