オゴノリを用いたオゴドウフ, エゴノリを用いたエゴネリの調理法を, 前報1) のアミクサゲル生成状況と比較しながら検討した。すなわち, オゴノリゲル・エゴノリゲルに対する米糠抽出液および食酢の添加効果を明確にし, アミクサゲルとの相違点を比較検討した。 1) オゴノリゲル調製には, 1%以上の米糠抽出液, あるいは食酢を個々に添加することが有効で, 硬くてもろいゲルが生成された。アミクサゲルとは異なり, 米糠抽出液・食酢の併用による添加効果は認められなかった。の6要素マックスウェル模型の粘弾性定数 2) エゴノリゲル調製時に食酢を添加すると, 硬さ・もろさ・粘弾性定数が多少増加し添加効果がみられた。しかし, 米糠抽出液添加効果はわずかであり, 米糠抽出液と食酢の併用による添加効果もオゴノリゲル同様に認められなかった。 3) オゴノリ・エゴノリのゲル特性を検討するため, アミクサを含む3種の海藻を各々熱蒸留水抽出し溶離する各多糖類の分子量をHPLCで比較した。その結果, エゴノリ多糖類の分子量分布はアミクサに比較して大きく, また, エゴノリ多糖類の平均分子量およびピークトップの分子量がアミクサ・オゴノリのものよりもきわめて高いことが認められた。 以上の結果によって, オゴドウフには米糠抽出液を, また, 溶けにくい場合には食酢を添加するという伝統的手法が, そして, エゴノリには食酢のみを添加し溶解するという伝統的な手法が, それぞれの海藻の性質の違いをうまく利用した調理法であることが理解できた。 稿を終えるに当たり, オゴノリ・エゴノリの植物学的分類をお引き受け下さいました山陽学園短期大学大森長朗教授, 多糖類の分子量測定を実施して下さいました林原株式会社技術部秋庭正典・岡田勝秀両氏に厚くお礼申し上げます。本研究の一部は, 日本食生活文化財団昭和60年度研究助成費によったものである。