1) 一般的に生食される山の芋 ( Dioscorea Batatas ), 消化がよいとされているじゃがいも ( Solanum tubero-sum ), 消化が悪いとされているさつまいも ( IpomoeaBatatas ) について, それぞれの細胞壁にとり囲まれた状態で加熱糊化されたデンプンの消化性を試験管内で比較した結果, いずれのいもの場合も細胞壁が存在しない陽合に比し, デンプンの消化率は低く, 消化抑制率は山の芋が最も低く, さつまいもが最も高い値を示した。 2) 3種のいもの細胞壁構成多糖の構成比を検討した結果, じゃがいも, 山の芋では主としてペクチン, ヘミセルロースから成るのに対し, さつまいもでは, セルロースの含量が他のいもに比し, 顕著に高値を示した。また各種いもの細胞壁構成多糖の構成糖を比較すると, 発生学的に根に属するさつまいも, 山の芋ではグルコースの比率が高いのに対し, 茎に属するじゃがいもではグルコースのほか, ガラクトース, ラムノースの比率も高値を示した。一方, セルロースの比率が最も低い山の芋では細胞壁の構造のもろさが示された。 3) それぞれのいもの細胞壁構成多糖による, α-アミラーゼの阻害性を検討した結果, いずれの場合も, 細胞壁構成多糖そのものによって, α-アミラーゼ作用が阻害を受ける事実は認められなかった。 4) いもの種類によって, 細胞壁存在下のデンプンの消化性に差が認められたのは, 細胞壁構成多糖の量, 種類, 構造等の違いによって, 細胞内へのα-アミラーゼの透過性が影響を受けたためと考えられた。また, このことは生体内でのデンプンの消化性にも何らかの影響を与えるものと考えられた。