著者らは食品のう蝕形成能はその食品のう蝕誘発に及ぼす基質としての性質 (酸産生能, 歯垢形成能) とその作用時間 (嚥下までの時間, 嚥下後の口腔内停滞時間) の四つの基準により評価することが可能であると提唱してきた。 本研究では基準の一つである食品の歯垢形成能を in vitro 系で評価しようと試みた。 日常間食として頻繁に摂取する食品で糖質組成の異なる42種類の市販菓子を被験した。これらの食品の水溶液を S. mutans 6715 株のglucosyltransferaseの粗酵素とともに37℃で16時間インキュベートした。この反応により生成された不溶性グルカン量を指標にして食品の歯垢形成能を評価し, 食品の糖質組成と歯垢形成能との関係について検討した。食品中のショ糖含有量と歯垢形成能との間に比例関係が存在した。食品中にマルトースやマルトトリオースがショ糖含有量の50%以上含まれるとその食品の歯垢形成能は40~50%抑制された。 以上の結果は個々の市販食品の糖質組成がわかると食品の歯垢形成能が推測できることを示唆している。