メタン発酵プラントにおいて,発酵槽気相部へ微量の空気を吹き込むことによるバイオガスの生物学的脱硫の実証実験を行った.発酵槽のHRT25日で平均3500ppm程度の濃度であったバイオガス中の硫化水素は,空気吹き込み開始後は平均1100ppm程度の低水準で推移し,生物脱硫が乾式脱硫の負荷軽減に実用可能であることが実証された.発酵槽内部にはTS比90%程度のS0を高度に蓄積したsulfur matが形成された.微生物群構造解析から,mat内では硫黄酸化細菌 Halothiobacillus neapolitanus と Sulfurimonas denitrifiacans に近縁な細菌が微好気環境で硫黄生成を行っていることが示唆された.活性試験の結果,水分含量の大きいmatの方が高い脱硫活性を持つことから,微生物の生息環境として最適な脱硫スペースの設計の必要性が示唆された.