切歯近辺から第一大臼歯近辺の硬口蓋に6つの圧力変換器をうめ込んだ口蓋プレートを装着し, テクスチャの異なる食物を用いて咀嚼から嚥下まで口蓋圧測定を行った.食物を取り込んで舌と口蓋で押しつぶす咀嚼を開始すると加圧のパルスが発生したが, 水, 飲むゼリーを除き, 嚥下のときにだけ減圧の嚥下パルスが生じる結果が得られた.嚥下パルスの形状は3種類のパターンに分けられた.また減圧になる嚥下パルスの大きさ, 口腔内の分布には個人差があった. 今回用いた試料で, 病院などの現場で経験的に知られている嚥下困難者には不適当な水, 寒天などの試料と嚥下困難者用に好ましいゼラチンやヨーグルトなどの試料を比較したが, 減圧パルスを数値化した減圧値・減圧面積からは嚥下困難者に適当, 又は不適当とされる試料の数値に差異はなかった.しかし咀嚼回数の少ない, やわらかいゼリーなどの試料は減圧面積が小さかった.また硬く, 咀嚼回数が多い試料では減圧パルスの減圧面積は大きい傾向を示した. 食物を口腔の奥へ移動するとき, 減圧パルスも切歯近辺の硬口蓋から軟口蓋へと奥の方向へと遅れることから, 食塊の移動に減圧パルスは関与していると示唆される.