日本の高齢女性とアメリカ (ホノルル, ロサンゼルス) の日系一・二世の高齢女性を対象に, 日常着の実態, 衣生活等の行動および意識について調査し, 日本とアメリカ間で着装意識と実態を比較検討した. (1) 日本, アメリカともにTシャツ, ブラウス, ズボンが代表的な日常着であるが, スカート, セーターは日本に比較してアメリカでは日常着の着用頻度が少ない. (2) 日常着の選択基準としては, 動きやすい, 洗濯しやすい, 着脱しやすい, 着心地のよい, 自分で購入したものなどは, 日本, アメリカの両方で上位にあげられた.なお, 日本では明るい色を選択基準として肯定していたのに対して, アメリカでは明るい色よりも地味な色を肯定している傾向にある. (3) 日本の高齢女性は日系アメリカの高齢女性に比べて, 「明るい色・柄の服装が好き」「もっと若向きの色・柄・デザインの衣服が欲しい」を肯定していた.これは日本の高齢女性は, もっと若向きの色・柄・デザインの衣服, 明るい色・柄の衣服を着装したいとの欲求が, 現実的には満たされない環境にあるためと推察される. (4) 衣生活等の行動および意識について数量化皿類による分析の結果, おしゃれ意識, 衣服の色・柄の嗜好, 市販衣服への不満の3つの軸が抽出された.これらの軸について, 日本と日系アメリカの高齢女性グループ間の関係を平均サンプルスコアにより検討した結果, 日本と日系アメリカの高齢女性グループ問には多くの統計的有意差が認められた.また各軸に対する基本属性の年齢, 同居形態, 職業の有無の要因の対応関係については, 日本の高齢女性の場合には多くの統計的有意差が認められたのに対して, 日系アメリカの高齢女性の場合には統計的有意差は殆ど認められなかった.