無水コハク酸で前処理した綿布の抗真菌活性を向上するため, 銅, 亜鉛及び2価鉄の金属塩で化学処理した綿布を調製した.前処理によって, カルボキシル基置換量が増加するとともに金属吸着量も増加した.試料の抗真菌活性は, 1~7日間培養した Trichophyton mentagrophytes IFO 5466 で評価した.培養7日後の銅, 亜鉛及び2価鉄加工綿繊維の真菌に対する増殖阻止率の範囲は 67.9~ 92.9%, 57.1~ 87.1%及び 35.7~ 85.6% であった.一方, 市販抗菌防臭加工繊維の増殖阻止率の範囲は 20.0~ 50.0% であった.無水コハク酸処理量は試験布の引張強度にほとんど影響しなかった.無水コハク酸処理量が低濃度のとき, 銅加工綿繊維で若干の着色が認められたが, 外観上着用に関しては不都合な問題ではないと判断された.従って, 今回開発した亜鉛及び銅加工綿繊維は, 繊維の衛生面に有用であることが示唆された.洗濯と光照射後の加工綿繊維の抗真菌活性も同時に評価した.加工綿繊維の耐洗濯性と耐光性は, 市販抗菌防臭加工繊維に比べ優れていた.