粉末煮干しだし汁の風味や溶出成分に及ぼすだし袋の影響および, 袋の素材の違いによるだし汁抽出への影響について調べた.1) 官能検査の結果, 粉末煮干しだし汁の抽出にポリエステルだし袋, キュプラだし袋を用いると, 香りが良く, 生臭みは弱かった.また苦味・渋味も少なかったためうま味には差がなかったものの総合的に好ましいと評価された.しかしだし袋の素材による差は明らかでなかった.2) だし袋を用いると酸度, アミノ態窒素量および全エキス分量は, 沸騰後2分でほぼ平衡状態となったが, だし袋を用いない場合に比べて溶出量は少なかった.5'-IMP, 5'-AMPおよび遊離アミノ酸もだし袋を用いると沸騰後2分でほぼ平衡状態となった.その溶出量はだし袋を用いない場合に比べて, ポリエステルだし袋はほとんど同じレベルになったが, キュプラだし袋では少なかった.これは親水性のキュプラ繊維にこれらの成分が吸収されたためと考えられた.3) だし袋を用いると香りが良く生臭みが抑えられるのは, 煮干しの脂質とその酸化・分解によって生成される特有のにおいが, だし袋に吸収されるためと考えられた.