生涯を見通し, また学習者の視点を取り入れた食物教育を考えるプロジェクトの一環としてアンケート調査を行い, 前報において, 若年層では調理に対する関心が非常に高いという結果を示した.本資料では, 調理技術と栄養・食品に関する知識の現状, できることが望ましいと考えられている調理などについて, 特に若年男女と中年男性に注目して分析し, 以下の結果を得た. 1. 男性は, いずれの年代でも女性より基本的な調理技術のレベルが低かった.栄養の知識については, 女性の平均レベルがいずれの年代でもあまり差がないのに対し, 男性では年代間で差が見られた.また男性の調理技術・栄養の知識レベルは, ばらつきが非常に大きかった. 2. 調理をする頻度及び自分の食事に対する栄養評価が高い場合に, 調理技術・栄養の知識ともに高くなる傾向が見られたのは, 10~20歳代男性のみであった. 3. 30~50歳代男性の分析結果から, 食物教育の内容として示した多くの項目に対して, 「知りたい」とするグループほど, 基本的な調理技術をもっている傾向にあることが示された. 4. 年齢・性別に関わらず, できることが望ましいと考えられている調理として, 炊飯, みそ汁, 包丁が使えることが上位にあげられていた.30~50歳代女性では, 焼き魚や青菜をゆでることもできることが望ましい調理と考えられていた.男性では, 自らができない多くの調理でも, 男女に関わらずできることが望ましい調理としていた. 以上の結果より, 男性は調理に高い関心を抱き, 基本的な調理技術を身につけるべきと思っていることが確認できた.しかしながら, 技術や知識レベルのばらつきや個人差が大きいので, 生涯学習においては, 個人のレベルや要望に応じて学習内容を選択できる到達段階別プログラムなどが必要となることが予想された. 本研究の一部は,日本調理科学会のプロジェクト研究「環境と調理科学」の助成金を受けて行ったことを付記する.