本研究は在宅療養者12名の住居の実態と, そこでの住まい方や時間軸に沿った過ごし方を明らかにし, 在宅療養者の居住環境を検討することを目的に行った.その結果, 以下の結論を得た. (1) 療養者の寝室は1階で玄関の近くに位置しており, 外部者が出入りしやすい状況にあった.しかし, 療養室としての寝室を決める際に日当たりの良さは考慮されても, 保健医療福祉関係者の出入りのしやすさや介護のしやすさを認識している者はいなかった. (2) 日中の居場所は10名が寝室となっており, その背景には歩行が困難であることや寝室以外に適切な居室がないことが考えられた.また, 食事は身体的要因と環境要因の両方が, 排泄は主として身体的要因が, 入浴は身体的要因と環境要因の両方が相まって, それぞれの行為の可能性とそれを行う場に影響を及ぼしていた. (3) 時間軸に沿った過ごし方をみると, 就床時刻や起床時刻が遅く不規則なリズムで過ごしている者や, 総就床時間が10時間を超える者がいた.その背景として, 日中も寝室で過ごしベッド上で長時間テレビを視聴していることや, 活動レベルが低く外出頻度が少ないことが考えられた.しかし, 同居家族に早朝起床したり出勤する者がいる療養者は比較的早い時間に起床して規則正しい生活を送っており, 家族が規則的な生活リズムを起動する役割を果たしていると推察された. 以上のことから, 自宅で療養生活を送る療養者には, 住まい方においても過ごし方においても安易に臥床してしまわない居住環境が必要とされる.そのためには, 日中はベッドや寝室から離れて安楽に身を置く場を確保することや, 活動の時間を作ったり規則正しい生活を送ることが求められる.保健医療福祉の専門家は療養生活の早い段階で, これらのことを助言していく必要がある. 今回の研究では療養者が日中も寝室で過ごすことが, 結果的に総就床時間の延長に関わっていることが推察された.しかし, 睡眠に関する客観的データをとっていないため, 実際の睡眠・覚醒リズムは把握できていない.今後は睡眠時間や睡眠の質なども把握し, 療養生活における住まい方と過ごし方の関わりをより正確に把握していく必要がある。