コシヒカリ, 日本晴, ゆきひかりを用いて, 炊飯中に溶出される糖成分の動向と食味との関係について調べた. (1) 炊飯中に溶出される固形物は主に糖類で, 加熱温度40~70℃と80~98℃の間に溶出される量が最も多く, 98℃時の量が最大で, 消火時, 蒸らし後に減少した. (2) 溶出固形物量は, 米粒の糊化の進行と密接な関係があることが分かった. (3) 溶出固形物中のアミロース含量は, 試料米のアミロース含量に影響され, 最も少ないのはコシヒカリで, 次いで日本晴, ゆきひかりであった. (4) 飯粒表面の粘りの強弱と溶出固形物量には関連性が認められた. (5) 溶出固形物をゲル濾過した結果, 3試料米共にアミロース区分よりもアミロペクチン区分の割合の方が大きかった.また, 中でもコシヒカリのアミロース区分の割合が最も少なく, アミロペクチンの長鎖長の割合は最も多く, 鎖長も長い傾向であった. (6) 官能検査の結果から, 米飯の外観は溶出固形物量と関連していることが示唆された.飯粒表面の外観がコシヒカリ米飯のつやの良さや口ざわりに影響を与えていることが明らかとなった. 以上のことから, 炊飯過程で溶出された糖成分の大部分は加熱中に吸収されるが, 一部は飯粒表面にでんぶんとして残存し, これが米飯の表面のつやや粘りに影響を与え, ひいては米飯の食味に影響を与えていることが分かった.