生活環境の異なる日本阪神間とネパール, ムスタン地区住民を対象とし, 生活意識および生活価値観に対する考え方を知る目的で調査を実施し, 得られた結果を比較検討した.「日常生活における楽しみ」は日本では「ラジオ, テレビ, 映画等」が多く, ネパールでは男女とも「会話」で, 家族の団欒の機会が多いことが示唆された.日本若年群では「仕事」は「収入のため」であり, 高年齢ほど男では「当然の義務」が増加した.ネパールでは「仕事」は「家族のため」で「義務」が少なかった.「トラブルや問題の解決方法」はネパールでは「年長者の助言に従う」が有意に多かった.日本男では「仕事の成功や収入」を心配し, 「現在の生活は快適でなくても満足」が有意に多かった.ネパールでは男女とも「来世の幸福」「財産」を心配し, 「現在の生活は快適」であった.「社会的弱者への援助」は2地域間で有意差があった.結婚等の祝いはネパールでは「地域の人たちと」「家族, 親戚, 友人と」であった.「伝統的習慣」や伝統評価に肯定的な考えはネパールの方に多かった. ネパールの調査地域では「個人」より共同体に対する意識が強く, 家族や地域という今も伝統的な習慣が絆や心の支えとなっていることが示された.これに対して, 日本では年代また男女によって各自の生活価値観が多様化して「個人」を重視する意識が強い.これらの調査結果により, 本研究の目的であるネパール人の生活態度が日本人と違うと感じられた点をほぼ説明できた.