水分量の異なる食品および食品モデル系を試料に, 金属製容器内部にて105℃の温度で加熱した際の, 試料加熱面から5mm以内の一次元方向 ( x 軸方向) における試料内部温度を, 新しく作製した加熱装置を用いて測定した.併せて, 各試料の熱伝導率, 比熱容量および密度を測定し, 熱拡散率を求めた. 得られた結果は, 以下のように要約される. (1) 試料中の熱の伝導は, 水分量とは無関係に伝導伝熱の形式に準じて現れた. (2) x 軸上各位置での温度上昇曲線は, すべての試料について, 熱伝導に遅延現象がともなうとして導かれた指数式で表現することができた. (3) すべての試料について, この指数式に含まれる遅延時間の逆数と熱拡散率との間に, 両対数座標上で直線関係が成立することが見いだされた. (4) 本研究で得られた実験結果にしたがって, 調理の際の食材内部における熱伝導に対し, 水成分が果たす役割を定量的に理解する方向へこの種の研究を展開させなければならない.