ルーの材料である小麦粉とバターの混合物 (未加熱の試料) の香気, およびそれの加熱初期段階である100℃ルーの香気を明らかにするため, それらの香気濃縮物およびバターの香気濃縮物をGCおよびGC-MS分析した結果は次のとおりである. (1) 未加熱の試料のガスクロマトグラムはバターのそれとほとんど同じであり, バターの香気からきていることが明らかであった. (2) 未加熱の試料と100℃ルーの香気には, 炭素数が6~12の中級のカルボン酸類や炭素数が8~12のδ-ラクトン類が多く含まれていた.一方, 量的には少ないが, 数種類のメチルケトン類や炭化水素類もみられた. (3) 未加熱の試料と100℃ルーとを比べると, 100℃ルーの方は香気濃縮物の収量は幾分多く, 材料の加熱につれ増加の傾向がみられた.それらのガスクロマトグラムは非常に似ていたが, 100℃ルーの方は低沸点化合物の成分量がやや多く, また2-ノナノンや2一ウンデカノンのようなメチルケトン類の増加がみられ, これらのことが加熱香気形成の最初の変化であろうと推察された.