淡水魚の調理のなかで, わが国の伝統調理である甘露煮の嗜好性の向上を目的にして, 調理における素焼きの効果を調べ, 以下の結果を得た. 1) 官能検査において, 全てのパネルが素焼き処理の有無を判別し, 素焼きを行った方が生臭さが少なく, 魚肉は硬く, 好ましいと判断された. 2) 甘露煮の硬さは, 素焼きを行った方が全魚, 魚肉ともに硬さは硬かった.骨の硬さには差がみられなかった. 3) 皮の引張強度をみると素焼き魚の皮の方が引張強度は高く, 煮崩れ防止に役立っていた. 4) 素焼き処理魚の肉は, 砕け易く, 小塊になり易く, 筋繊維は細く, 切断されにくいことが認められた. 5) 素焼き処理によって, 魚肉の脂肪が減少し, 甘露煮処理中に脂肪の溶出が少なく, またタンパク質, コラーゲンの溶出率が低かった. 6) 調味料の浸透は素焼き処理魚の方が速やかであることが, 蛍光色素を加熱液に添加した実験で認められた.