専門知識をコンピュータに移植し, 蓄積された知識を用いて問題を解決できるように支援する, 既製のエキスパートシステムを利用して食事診断システムを開発した. システムは情報を収集する部分, それを判定する部分, そして総合的な評価を下す部分の3つで構成した.情報は個々人の食生活実態把握に必要なもの46に絞った.判定は栄養所要量の考え方を参考にして設定した一定の診断基準によって行うようにした.総合評価は判定結果を組み合わせてパターン化し, 食べ方についてのアドバイスを出力するようにした. なお, エキスパートシステムの導入にあたっては, 食事診断論理の体系化が不可欠であった.したがって食生活の知識を整理して, 診断基準を標準化し, 個々の判定結果をまとめて, 食べ方レベルで評価する手順を検討した.その論理展開をできるだけ自然言語で表現してルールに反映させることにより, 食事診断手順の成文化に努めた. この食事診断システムを利用すれば, 食生活の評価を一定の基準で行うことができ, 実態の把握や食教育がより的確に行え, 指導効果の判定も可能となるであろう.また, 結論を導く論理の展開過程は, 栄養指導の教育にも役立つのではないかと考えられた.