小麦粉とバターの妙め温度によるルーの香りの変化について, 種々の加熱温度 (100,120,140,160℃) で調製したルーを用いて, 女子学生により官能的にそれらの香りの特徴を把握した.更に香気の変化が認められ始めた120℃ルーの香気成分の分析を行い, 香りの形成について考察した. (1) 4種類の試料の香りは官能的には明らかに異なっており, 100℃ルーではまだ材料から来る香りが強く, 120℃ルー (ホワイトルー) になると「ミルク様」や「甘い」香りがかなり強くなって来, 140℃ルーでは120℃ルーとほぼ類似しているが, 「こうばしい」香りがより強くなった.160℃ルー (ブラウンルー) では材料から来る香りは消失し, 特に「こうばしい」香りのみが強くなった. (2) 4種類の試料の中, 加熱により生成する幾つかの特性香がバランス良く含まれる140℃ルーが最も好まれた.それに対して100℃ルーは最も好まれず, ルーの香りとしては加熱香の重要性が認識された. (3) 加熱香が生成し始める120℃ルーの香気成分としては2-ウソデカノンをはじめとする直鎖状のメチルケトン類が量的に多く, その他n-アルデヒド類, n-アルコール類, n-カルボン酸類などの直鎖状含酸素化合物が数多く含まれていることが特徴であった。そしてこの段階では, バターや小麦粉の主成分である糖, アミノ酸, 脂質の成分間の加熱による化学反応はまだ起こっていないと推測された.