唾液中α-アミラーゼ活性の変動要因として日常喫飲する機会の多い紅茶につき検討を加えた結果をまとめると次のようになる. 1) 日常われわれが喫飲する濃度に調製した, 各種茶類 (日本茶, ウーロン茶, 紅茶) おのおのの抽出液を直接添加し, 唾液中α-アミラーゼ活性を測定したところ, 紅茶は特異的に活性を低下させることが認められた. 2) 唾液中α-アミラーゼ活性低下因子として紅茶中のタンニンが作用しているものと推察された. 3) 同一の生茶葉から製造した日本茶, ウーロン茶, 紅茶を用いて比較検討の結果, 活性低下因子としてタンエソの含有量よりもむしろ紅茶製造中に生じた重合度の高い高分子タンニン, すなわち, タンニンの組成が大きく関与していると考えられた. われわれが日常直接口にする機会の多い食品 (各種茶類) が唾液中α-アミラーゼにいかなる影響をおよぼしているのか, 作用する食品側からの検討を試みたわけであるが, 今後はさらに一歩進めて, 影響を受ける側すなわち, α-アミラーゼがなぜ特異的に影響を受けるのか, その活性低下機構につき詳細に検討していきたい.