ヒータの放射波長の違いが食品の加熱効率および食品の仕上がりに及ぼす影響を明らかにするため, 放射特性の異なる代表的なヒータ4種を用いて実験的研究を行い, 下記の知見を得た. 1) 今回使用したヒータでは, 放射のピークが短波長領域にあるヒータほど, 全放射エネルギー量の指標となる放射伝熱量は大きかった. 2) 水の温度上昇の速さ, 蒸発速度は, 水の赤外吸収帯におけるヒータの放射率にかかわらず, 放射伝熱量の大きいヒータほど速かった.また, ヒータの放射特性により赤外線の水への浸透状態が異なるため, 水の温度分布が異なることがわかった. 3) スポンジケーキの焼き時間は, 放射伝熱量の大きいヒータほど短い.焼き色には, ヒータから放射される赤外線の浸透度が大きく影響する.長波長領域に放射のピークがあるヒータから放射される赤外線は, 浸透度が浅く表面で吸収されるため, 表面温度が上がりやすく焼き色をつけやすい.ただし, 放射エネルギー量が小さければ, 表面温度も上がりにくいため, 焼き色はつけにくい.