開封状態および冬眠密着包装の状態で, 20℃光照射および30℃フラン器内の条件で保存した胚芽精米について, 保存中の食味の変化を調べるため官能検査を実施し, あわせて炊飯特性, 水分含量および米飯のテクスチャーや糊化度についても保存中の変化を調べ, 食味の変化との関連性について検討した. 1) 保存前 14.9% であった米の水分は, 開封保存では30℃フラン器内で 8.5%, 20℃ 光照射で 10.1% まで低下したが, 冬眠密着包装の状態では水分の変動はほとんど認められなかった. 2) 米飯粒のテクスチャーの変化は, 30℃ フラン器内開封保存で最も著しく, 120 日保存でかたさも付着性も凝集性も, いずれも保存前と比べて有意に低下した. 冬眠密着包装でも, 保存 60 日目ですでに凝集性の有意な低下が認められた. 3) 搗精直後の胚芽精米と開封保存試料と冬眠密着包装保存試料の三者について, 順位法により官能検査を行った結果, 20℃光照射の条件では, 保存 25 日目ですでに開封保存試料が他の二者と比べて嗜好性が低下し, とくに米飯の粘りに差を認めたものが多かった. 30℃ フラン器内の条件でも, 保存 45 日目で開封保存試料が他の二者と比べて好まれず, とくに粘りに差を認めた者が多かった. 4) 炊飯特性のうち, 加熱吸水率や膨張容積は開封保存試料で変動が大きく, 冬眠米では保存中ほとんど変化しなかった.逆に, 炊飯液中の溶出固形物量や炊飯液のヨウ素呈色度は, 冬眠米のほうが変化が大きい傾向が認められ, とくに 30℃ フラン器内保存の冬眠米では後者の値の低下が著しかった. 5) 米飯塊のテクスチャーの変化は冬眠米のほうが大きく, かたさの上昇と凝集性の低下が認められ, とくに30℃フラン器内保存の冬眠米は凝集性の低下が最も著しく, 1.5 ヵ月くらいですでに保存前より有意に低くなった. 6) 3 点識別試験法による官能検査の結果, 開封保存試料のみならず冬眠米の場合でも, 保存 1.5 ヵ月くらいで, 搗精直後のものとの差は識別可能であった.また, 嗜好度の差は, とくに粘りにおいて顕著であった. 7) 保存前 98% であった糊化度は, 開封保存では水分の減少とならんで低下し, 最低 86% まで低下したが, 冬眠米のほうは変動が少なく, 最終 93 ~ 96% を維持していた. 126 日保存米の米飯を1日冷蔵庫内に放置したさいの老化の程度も, 開封保存のほうが大きい傾向が認められ, 1 日放置後の糊化度が冬眠米では 67 ~ 68% に対し, 開封保存米では 61 ~ 62% にまで低下した。 8) 以上の結果より, 冬眠密着包装の状態でも 30℃の保存条件では, 保存中にデンプンの性質に何らかの変化が起こり, 炊飯特性や米飯のテクスチャーを変化させ, 食味の低下をひき起こすことが明らかとなった.