1) 乳酸菌 L. helveticus B-1 による発酵乳の生成 (酸生成) を促進する物質について検討した.他の乳酸菌ですでに知られているように, 核酸関連物質のうちプリン誘導体のアデニンやヒポキサンチンおよびそれらの類縁体に酸生成促進効果があり, 有機酸のうちではギ酸ナトリウムに効果が認められた.また酵母エキス中にも酸生成促進作用を有する物質が存在した.この酵母エキス中の有効成分は260nmにほとんど吸収をもたず, 有機酸とも異なる低分子化合物と推定されるが, その構造については現在検討中である.なお, 検討したアミノ酸, 無機塩類, ビタミン, ギ酸ナトリウム以外の有機酸には効果が認められなかった. 2) グアニンおよびその類縁体は L. helveticus B-1 による酸生成を阻害したが, とくにGMPによる効果が顕著であった.アミノ酸のグリシン, スレオニン, メチオニンなども阻害作用を示すことが認められた. 3) 顕微鏡観察による菌の長短と酸生成度との間に密接な関係のあることが明らかになった.よく分裂し菌が短くなるときには酸度も高く, 逆に阻害物質の存在により分裂できず菌が異常に伸長しているときには酸度も低かった.