本研究では, きざみ食を安全に食べるための基礎的研究として, とろろの有効性を検討した. (1) 山芋粉末と蒸留水で調製したゾル (とろろ) は, 粉末濃度が増すほど硬さ, 付着エネルギー, 貯蔵弾性率 G 'および降伏応力 S yは高い値を示し, 凝集性および臨界歪み点は低い値を示した. (2) ゲル-ゾル混合試料は, 硬さはヨーグルト程度のゾルとマッシュポテト程度のゾルを用いた試料のときに低値を示した. 付着エネルギーおよび凝集性では, 硬いゾルを用いた混合試料ほど高値を示す傾向が認められた. いずれのゾルを混合した場合にも, ゲルのみよりも硬さおよび付着エネルギーは低値を示し, 凝集性は高値を示し, きざみ食へのあんの有効性が示された. (3) ゾル5種において, 濃度の高い試料ほど, 官能評価においてもかたく, べたつき感および残留感が多いと評価された. 中濃度の, マヨネーズ程度の試料がまとまり感があり飲み込み易いと評価された. (4) ゲル-ゾル混合試料の官能評価結果より, 高濃度ゾルを用いた混合試料ほど, べたつき, まとまり感があると評価された. 中濃度ゾル, すなわちマヨネーズ, 大和芋とろろ程度のゾルを用いた混合試料が飲み込み易いと評価され, ヨーグルトおよびマヨネーズ程度のゾルを用いた混合試料が残留感が少ないと評価された. (5) ゲル試料, ゲル-ゾル混合2試料の計3試料での官能評価結果より, ゲルをゾルで覆うことにより, ゲル単独のときよりも有意にやわらかく, 残留感が少なくなることが示された. 本研究に用いたゲルはマヨネーズ程度の硬さや粘度をもつゾルでまとめると, まとまりよく, また飲み込み易くする働きがあることが明らかとなった.