本研究では,例文を通して英単語の意味推測を支援する機能(足場かけ)を有する英単語学習システムを開発(S1)し,足場かけの使用による学習者の学習能力の変化を調査する.本機能は,学習者の要求に応じて,学習対象の単語を除いた英語例文の日本語翻訳を提示する機能である.この穴あきのある日本語翻訳をヒント翻訳と呼ぶ.学習者は,英語例文と同時にヒント翻訳を参照できるため,英語例文中で単語の意味推測を支援する「足場かけ」になると考える.実験では,英語レベルの中級者10 名と初級者10 名をS1 と既存型システム(S2)に分け,二週間学習させた.その結果,学習前後において,有意差は認められなかったものの,S1群の中級者は,S2群の中級者に比べて多くの英単語を獲得できる可能性が示唆された.また,S1 群の中級者は,日増しにヒント翻訳の使用率が減少し,足場かけなしで英語例文を通して英単語の意味を推測しながら英単語を学習するという学習能力の変化が見られたのに対し,初級者はヒント翻訳に依存してしまい,英単語を学習することができないことがわかった.