本論文では,個人が持っている物語の背景にある多元的な価値構造を可視化し,定量的に分析するための半構造化面接の手法として,コルクボード・イメージ・マッピング法を提案する.提案手法の手続きは1)物語からの主要項目の抽出,2)コルクボードへの布置(コルクボード・マップ)とその解釈,3)多次元尺度構成法(MDS)を用いたイメージ・マップ(MDSマップ)の作成とその解釈,4)両マップの比較検討,によって構成される.また,作成された両マップの解釈は,各実験参加者自身への面接で行わせる.提案手法を用いた実験の結果,各実験参加者の物語から価値を抽出できることが確認され,提案手法の有効性が示された.また,軸や布置の解釈から,価値構造を定量的に探索可能であること,また,コルクボード・マップとMDSマップの比較により,個人ごとの布置方略の定量的な判別が可能であることが示唆された.本研究の提案手法を用いることによって,物語の背景にある価値構造の特徴を記述することが可能であり,社会における議論の共通基盤や論点の差異を明らかにできる可能性が示された.