適応共鳴理論(ART)は入力と記憶の類似度にもとづいて認識カテゴリを適応的に生成・成長させる教師なし学習システムである.近年,ARTを用いた強化学習システムに関する研究が活発に行われている.これらの研究は,ARTが知覚情報をカテゴリとして分割しながら動的に状態空間を構成し,エージェントが状態空間に対応する行動選択を学習するものである.しかしながら,学習可能な時間が限定される場合,分類精度を決定する警戒パラメータの設定方法が問題となる.状態空間の分割が細かすぎる場合は行動を最適化するまでに膨大な時間が必要となり,分割が粗すぎる場合は解を得ること事態そのものが不可能となる.そこで本研究では,学習時間内で可能な限り勝率を高くすることを目的とする階層型ファジィART学習システムを提案する.提案システムは,プレーヤの学習度合いに応じて分類精度の異なるファジィARTを追加し,段階的に状態空間の分割を行いながら行動選択を学習する.提案システムを評価するため,Fighting Action Gameを対戦環境としたシミュレーション実験を行い,エージェントが対戦相手に対して適応的な学習を実現できることを示した.