本論文では,日常行動理解研究を推進するために,異分野の専門家や知見を利用するユーザが,日常行動に関連する情報を書き込んだり,分析したり,考察したり,活用するための,容易に理解可能な情報表現法やそれに基づく計算法を考察する.また,そのような情報の表現や計算の手段を提供する具体的なシステムとして,「時空間意味情報マッピング・システム」(STS Map; Spatio-Temporal-Semantic Map)を提案する.STS Mapは,1)ロケーションセンサを用いた現象の時空間展開機能,2)時空間座標系をベースとした多層的な情報の表現機能,3)時空間統計数理を用いたモデリングとリターゲット機能から構成される.本論文では提案システムの実現可能性と有用性を考察するために,ロケーションEMGセンサを用いて保育園の遊具で遊ぶ幼児 47名の行動計測を行い,時空間意味情報マッピング・システムを適用した事例について報告する.さらに,幼児の年齢を考慮した難度を有する新しい遊具の設計について報告する.新しい遊具は幼児の遊んでいる「最中」の行動をモデル化し,構築したモデルによる筋電位推論値のクロス評価を行い,モデルの改善を行った.改善された行動モデルをベースとしてリターゲットを行うことで新しい遊具での筋電位発生頻度を推論し,その結果を遊具デザインの指針として,遊具メーカと協力することで遊具を作成した.