本論文では,良否を含む過去の顎矯正手術事例から得られる知見を集約し,新規患者の手術計画に援用する手法を提案した.顎矯正手術において,審美性という点のみに注目して過去の症例を考察した場合,必ずしも審美性が向上したとは言えない事例が存在する.適切な手術計画を行うためには,審美的な観点から望ましい事例のみならず,望ましくない事例から得られる知見をも積極的に取り扱うことが必要である.本論文では,成否両方の事例から望ましい入出力関係の獲得を行うニューラルネットワークである自己組織化関係ネットワークを改良した手法を提案した.さらに,集約した知見を視覚的に理解しやすい形式で表現するために,画像処理による症例のクラスタリング手法などを導入した.提案手法とプロフィログラムなどを用いた従来手法とを統合した手術計画援用システムを構築し,その定性的評価を行った.